簡易な小説1−6
少女とハコは明かりが灯る部屋へ入ったと進んだ。
「わー明るい、それにテーブルに椅子もある」
少女は驚いた。
まるでそこだけ時間が止まったかのようにテーブルの真ん中を照らすように丸い傘の付いた照明があって、埃が積もっていない緑色のクッションが付いた椅子が、まるで先ほどまで人が座っていたかのように少しだけ飛び出てあったのだ。
そしてその部屋の様子にハコも驚いた。
どんなに綺麗な家でも微生物は存在し、それはたとえ人間がいなくなっても活動している。
そして長く換気していなかったら空気がこもった匂いとなって酸素を消費している。
この部屋は長らく扉を開け閉めされていなかったはずだ。
なのに空気が新鮮だったのだ。
これは換気システムが生きていることの証明だった。
換気システムは電気の力によって動いている。
つまり電気が生きているということだ。
だが、蓄電池というものは必ず寿命がくる。
つまり誰かが発電機でこの現在の電気を発電しているということだ。
一体誰が、それが少女にとって味方なのか敵なのか現時点でわからなかったが長らく出会うことがなかった第3の存在に出会えるかもしれない。
世界が3次元的に広がったように感じた。
今までは少女とハコしかおらず二次元的な世界で灰色の世界だった。
それがまるで広がりを持って色づいていくようなそんな気分にさせていた。
「ねぇやっぱり誰かいるんだよねハコ」
ハコの考えと少女の考えは同じようだ。
ハコは同意するようにキュルルと鳴いた。
「どんな人かなハコ」
少女は喜びとワクワクで嬉しくてたまらないといった感じだ。
それはそうだろう、私はこの少女に対して手助けができても会話の相手にはなってやれないから、キュルルと鳴くことしかできないから。
ハコは少しの寂しさを感じたが、それでも少女が今までになく明るい笑顔を見せたのでそのことが何よりも嬉しかった。
「それじゃあハコ探しに行こうかもしかしたら奥の方にいるかもしれないし、あっ、でも待ってた方がいいのかな?」
少女は今すぐにでも会いに行きたいと言った感じだ。
それがどんな存在かもまだわからないのに。
それだけ二人で何の便りもなく歩き続けてその都度その都度なんとか食べ物を探して生きていくのは辛いのだった。
だがハコはむやみに歩き回るのは不安だった。
なので体を横に動かして首を振るような動作はした。
ここにもし人が住んでいるなら行き違いになってしまうかもしれないし、勝手に人の家をやたら探索するのはどうかなと思ったのだ。
「ハコは待ってた方がいいって考えてるんだね」
キュルルと鳴いて同意する。
「それじゃあ待ってようか、でもお腹減っちゃったな」
そういえば少女は大きな扉を押してから何も食べていないのだった。
そのひもじさが部屋に備え付けられていた白と紺色のストライプで塗装されたキャビネットへと視線を動かさせた
少女はキャビネットを見ると椅子を引き出してその上に立ち、試行錯誤しながら開けた。
ひもじさが食べ物を探させていた。
誰か住んでいると思っているはずなのに餓えは他人の物だから取ってはいけないという感覚を少女から奪っていた。
そうハコは思ったが、それは感覚が三次元的に広がった証拠だった。
誰か他人がいるという感覚が守らなければいけないルールを思い出させたのだ。
だが少女は何も食べていない。
このまま待つという選択肢をしたが、この家の主が何時頃戻ってくるかも分からないもし2〜3日戻ってこなかったら少女は飢え死にしてしまうかもしれない。
それだけ寒さと飢えは深刻だ。
だからハコは少女がキャビネットを漁るのを止めるのはやめた。
いたいけな少女がわずかな食べ物をあさっていただけで怒鳴り散らすような人間だったらハコはむしろ全力で戦おうとさえ思った。
そうだ、なんならここから逆に追い出してしまえとさえ思える。
ジャックと豆の木の巨人を落としたような話しだ。
巨人はいきなりジャックに財産を取られて怒って出てきたら、ジャックに退治されてしまう。
だが物語はもめでたしめでたしと終わっているだろ。
それと同じことだ。
私の使命はいたいけな少女を守ることだ、ハコはそう改めて心に誓うと辺りを警戒しだした。
だがそんな風な決意をハコがしているとは露知らずに少女はガサゴソとキャビネットの中を探した。
「あっ、あった食べ物」
少女は何か見つけたようだ。
少女の手には袋にぎっしり入ったクラッカーと缶詰のスープがあった。
缶詰のスープは豆のスープだ、いかにも栄養がぎっしり詰まっている。これだけ食べれば少女は元気になるだろう。
ハコは嬉しくなりキュルルと鳴いた。
「ねぇハコ、これ食べていいのかな?ダメな?」
あまりにいつぶりかの大量の食糧に、勝手にあさった罪悪感が出たのかわざわざ質問した。
ハコは食べていいんだと言いたげにキュルキュルと鳴いた。
「じゃあいいよね食べてもたくさんあるみたいだし」
「あっでも、缶切りがないや」
少女は缶切りがないことに気づくと少女はひどく落胆した。
だがそれは杞憂だった。
ハコは少女から缶詰をもらうとアームの先に付いた鉤爪で缶詰を掴むとクルルルッと缶詰を回した。
そうすると缶詰をの蓋の辺りが綺麗にぽっかりと開いて中身が見えた。
「ハコすごい!!)
少女は尊敬の眼差しでハコを見るとパチパチと小さく拍手を送った。
ハコは照れくさそうに体を右に左にくねらせて喜びを表現した。そしてテーブルの上に缶詰を静かに置いた。
「わぁーこんなにお豆が入ってる!!」
少女は歓喜の声を上げた。
それは無理からないことだった。豆がぎっしりと入ったスープなんて少女は久しく食べていなかったからだ。
ただ、あまりにぎっしり入っているもんだから手で食べるわけにはいかなかった。
少女が自分の手を見て右往左往しているとハコは気を利かせてどこからかスプーンを取ってきてくれた。
「ハコありがとう」
少女はスプーンを手に取って豆のスープをこぼさないように慎重に缶詰にスプーンを差し込んだ。
だが元々ギッチリ入っているもんだからスプーンの体積が加わったことで少し溢れてしまった。
「あぁもったいない」
心の底からそう思っている口調で言うと少女は落ちたものを指の腹でとると舐めて食べた。
「うん美味しい」
久しぶりのケチャップ味だった。溢れた事で今度は取りやすくなり少女はスプーンで思い切ってすくった。
豆がこれでもかとスプーンの上で山盛りに乗っかると少女はそれを見て目をキラキラとさせた。
食べるのがもったいない、そんな表情が見て取れた。
少女は決心すると思い切って頬張った。
ほおばって口にたくさんお豆が含まれるとキラキラしていた目がが更に明るさを増して、まるでひまわりが花開いたかの様な、そんな歓喜に満ちた笑顔を浮かべた。
もぐもぐもぐと何度も噛んでゴクリと飲み込んだ。
そうすると最近少女から全く感じることがなかった、食事での満足感、充実感、美味しいという感情が湧き上がっているのがハコには分かった。
少女の笑顔を見てハコは嬉しくなりアームでクラッカーの袋を開けて、そこからクラッカーを2枚ほど少女の目の前に差し出した。
これにつけて食べると美味しいと言いたげにクラッカー2枚を器用に上下させる。
うんそうだね、クラッカーにつけて食べてみよっか。
少女は頷くとクラッカーを一枚だけ手にとってスプーンで豆のスープをすくってこぼれないように慎重に乗っけて一気に頬張った。
もぐもぐパリパリと食べてくしゃくしゃとなったクラッカーは何とも言えない味だった。
先ほど感じた充実感もそうだったが、食事というのはこんなにも人の心を満足そして嬉しさを込み上げさせるものなのか。
ハコは少女を見てそう思った。
自分は食べたことがないから理解できなかったが、それでも美味しそうにご飯を食べている症状を見てハコも心はあったかくなった。
それから少女は何度もおいしいおいしいと言いながらお腹いっぱいならまで食べた。
結局、缶詰一つとクラッカーの袋半分を食べて、少女は満腹のあまり眠くなって寝てしまった。
ハコは少女の体が冷えないようにそばに近寄ると排気口から出る排気熱を掛けてやり。どこからか見つけてきたタオルを掛けた。そして自分も少し座って休むことにした。
作者あとがき
今回は少女とハコが見つけた部屋の中で食事をしたところで終わっている。
ハコはキュルルとしか言えないのだが、実は結構な高度な心を持っているということが初めて出てきた話だ。
なぜこういうキャラクターを作ったのかと言うと私はホーキング博士という人を知っている。
知っているとや知人という意味ではない。
あくまで有名人として知っているということだ。
ブラックホールが蒸発するとかいうとんでもない発想をして生きていればノーベル物理学賞を取ったであろう人だ。
なぜもっと早くあげなかったのか謎で仕方がない。
そのスティーブンホーキング博士は様々なユニークな議論をしたので有名だ。
宇宙人がいる可能性とか火星はに有人探査行けるのかとか、いわゆる物理学的なもの以外の一般大衆が関心があるよな話題も出している。
だがそんなスティーブンホーキング博士も筋ジストロフィーになり自分の声では会話できなくなってしまった。
だが、時代は ITの時代になっていたので病になる前の声を出来る限り再現したインターフェースでわずかな目線の動きで喋ることができていた。
もしこの装置がなかったらスティーブンホーキンス博士のような優れた頭脳を持っている人は人生耐え難いものになっていただろう。
そういうことを時折考えていた私は知性と言葉の上手さは一致しないと考えるようになった。
つまり会話が上手な人と会話が上手じゃない人では一般的には会話が上手な人の方が知能が高いように思われるが必ずしもそれは一致しないのだ。
もし高度な頭脳があっても喉が潰れていればそれを表現できない表現できなければ考えの表明ができない。
つまりどんなに高度な頭脳を持っていても相手にされなくなってしまう。
ホーキング博士は幸運にも世界的な学者であったからインテルの協力もあって生涯喋ることができていた。
だが、多くの筋ジストロフィーの人はこのハコのように内面ではいくらでも言葉が出てくるのに表現できる言葉が人の助けてを借りて6文字や12文字頑張って30文字ぐらいになってしまうのではないか。
そう思ったのだ。
私は小説をキーボードで書いている。
この小説は口述筆記だけど普段はキーボードで書いてるんだ。
買ったものでも書いたがエルゴノミックスキーボードを買ったんだ。
大分慣れてきたが、慣れたキーボードと比べて浮かんだ言葉は書くのが遅かった。
そうすると次に続く思考に追いつかずそこで止まってしまう。
そうすると自分のアイディアが逃げて行ってしまう時がある。
なので筋ジストロフィーの人も似たような思いをしているのかと思った。
自分の考えも表明が間に合わないということだ。
内面で考えてる時は考えが熟成されて、それを表明しようとすると辛いものになる。
ということはあるだろうと考えたのだ。
そんな考えがハコというキャラクターを作った。
長いあとがきになってしまったのでこの辺で閉じようと思う。
どれだけの人が見ているか知らないが何かのきっかけで見てくれたら嬉しい。
それではまた。
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