簡易なの小説1−9

少女と箱 1-9

扉がゆっくりと開いた。
それはまるで永遠の時のように引き伸ばされるような錯覚を覚えさせるほど重大なことだった。
ゆっくりとゆっくりと開いた扉はその奥にいる熊のような男がハンドルを手で回して開けている。
そう、大男が開けているのだ。
ギ〜っという低く唸るような金属音と共に扉が開いていく。
そして静かに静かに男の足と思われるものが、そのわずかに開いた隙間からちょこっと出た。
なんだ男も緊張しているのか随分もったいぶるじゃないかハコはそう思った。
そして男の眼と思われるものが、そのわずかに開けたドアの隙間からキョロキョロと辺りを見渡してハコと少女がいることを確かめた。
「あっ、あの〜どちら様で....?」
男は低い声で話しかけてきた。
その声は少し怯えているような気がした。私の勘違いだろうか?。それとも本当にあの大男は怯えているのか?。
「おっ、お客様なんて何年ぶりだろう、5年ぶりかな?。10年ぶりかな?。はたまた20年だろうか。それ以上な気もするしそれ以下な気もするし...もう数えるのが馬鹿らしくなるほど久しぶりかもしれない...」
そう言うと大男はゆっくりとゆっくり扉を完全に開けていった。
「はっ、初めましてエドムと言います。こんな成りをしていますが人間です」
男はぺこりと頭を下げて挨拶した。
そして顔を上げるとその顔を見て私は驚いた。
男は確かに人間ですと改めて言わなきゃいけないほどその外見は変わっていた。
熊のような背中は当然のように毛深く。初めて見る顔も狼男と言われた方がしっくりくるほど毛深い。
目と鼻をほんの少し残して顔中毛に覆われていたこれは珍しいニホンザルでさえ顔にはそんなに毛がない。
チンパンジーはどうだったか?。チンパンジーもないのではないだろうか。確か毛がないはずである。
と、すればこの人間はチンパンジーやニホンザルよりも毛深く狼のようだと言える。
だが、狼とは違いおどおどしていて堂々たるような雰囲気はない。
「あっ、貴女の名前は何て言うんですか?」
どうも必ず初めの部分だけでつまずくようだ。
吃音症の気があるのかもしれないが、それが続けて出て発言が全くできなくなれば確かに吃音症だがそこまでではないので違うだろう。
そう、ハコは推理した。
「初めまして私は・・・って言います、よろしくお願いします」
少女の方がよっぽど綺麗な挨拶をしている。
この男も見習ったらいい。
「それでこっちが私と一緒に旅しているハコっていうロボットです」
「・・・ちゃんにハコか。よろしく」
なんだかビクビクしながら受け答えしているなこの大男。
本当に20年ぶりぐらいに人と話すような感じだ。
「でもどうしてここに来たの?。ここには僕しかいないけど」
「えっと外が大変なことになってて、すごく寒くて食べ物もなくてそれであちこち彷徨っていたらここを見つけてそれで申し訳ないんだけどすごくお腹減ってて少しご飯食べちゃったんだ。
だからせめて家の人に謝ろうって話になって」
少女は詳しく事情を説明した。それはこの目の前の大男が単に引っ込み思案なだけの気のいい奴だと少女は思ったようだった。
「外が大変ってどういうことだい?」
なんとこの大男不思議そうに言っている。まるで世界に何が起きたかを全く知らないかのようだ。
「あの〜すみません、あなたは20年以上ここにいるんですか?」
当然の質問である。
あれほどのことが起きたのにまるで知らないかのような言葉遣いだからだ。
あれほどの事が起きたのに、だ。
「20年...そうか20年以上いるのかな?だとしたら分かんないかもしれない、ずっと外に出てないから」
どうやらこの大男、ここに住み始めてずっと外に出ていないようである。
その割には随分と食料があるなと不思議に思った。
「食べ物とかいったいどうやって補給してるんです?たくさんあるみたいだけど」
少女はたまらず質問した本当にその通りだ私が喋れていたら少女よりも早く質問していただろう。
「ずっと地下からレールに乗って食べ物が来るんだ、だから困らない」
・・・。
・・・。
少女とハコは一瞬大男が何を言っているのか分からず困惑してしまった。
地下からレールに乗って勝手に食べ物が補充される?そんなことがあるのか?。
ハコも少女も目を丸くしたい気分だった。
まるでこの男のために誰かが働いてるようなそんな感じだ。
ということはこの男は20年以上も地下からレールに乗って運ばれる食べ物を食べて生きてきたということか。そしてそれは電気によって動いているというのか。
行く宛もなく彷徨って偶然見つけたこの施設は、もしかすると超重要施設なのかもしれない。
ハコはそんなふうに考えた。
「それじゃあ貴方はずっと地下で暮らしていたの?」
少女は当然の疑問を問いかけた。
「ああそうだよ、俺はずっとここにいるのは事実だ。ずっと地下で暮らしている」
「1回も地上に出てないの?」
「一回も出たことがない。いつからだろう?生まれた時から?。いやもっとかな?。それすら分からない」
男は本当にわからないといった感じだった生まれる前からなんて奇妙な言い方をしている。
その理屈だと母親の腹にいた時からということになる。
この男は何なんだ?。嘘を言ってるようには見えない。
だけどとても信じられないこと言っている。
生まれる前から地下で暮らしていてレールで食料が供給されているどういうことだ?。
ハコは優秀な頭脳で考えたが、いくら考えても答えが出ないものは出なかった。
パズルのピースが足りないのだ。
それは少女も感じたようだった。
なので少女は思い切って切り出した。
「そのレールってどこにあるの?、私見てみたい」
ごくごく自然な感じで言った。率直に疑問に思った純粋な好奇心、そういった感じだ。
これなら男も警戒しないだろう。
「なんだ見たいのか?。まぁ今から食料を取りに行くから別にいいけど」
どうやら男はちょうど食料を取りに行くとこだったようだ。
これは好都合だ。
「それじゃあ付いてってもいいかな?」
「物を壊さなければいいよ、それにお腹減ってるんだろう。ちょうどいいのがあったらあげるよ」
どうも男は少女の話し方に好感を持ったようだ。邪険にするのではなく付いてくるように言った。
「ありがとう、それじゃあお邪魔します」
「それじゃあハコ、付いていくけどいいよね?」
ハコに一応確認を取る。
だがハコの答えは決まっている。
少女が望んだなら良し、望まざるなら否だ。
そして、付いていかない方がメリットになる明確な説明をするだけの材料はなかった。
この場所がどうなっているのか明らかにする方がはるかに大きいメリットだ。
もし本当にレールで食料を供給されるならここにしばらく滞在させてもらいながら辺りを探索して調べ上げる、そういう方法もあるはずだ。
ハコはキュルキュルキュル言いながら考えて、男の後についていく少女の後ろに付いて行った。
男が開けたドアの先にへと進んだ。
どうやらカメラに映っていた時の男がやっていたことは通路に落ちたガラクタを箱に入れて避けていたようだ。
ナンバー3がそのガラクタの隙間から顔を覗かせていた。
なので男に気付かれないようにこっそり回収した。
ナンバー3よくやった。
ナンバー3は軽くチカチカと光るとハコから飛び出た場所へと戻って行った。
それからしばらくまっすぐな通路を歩くと、地下5階の深さ以上あるであろう、この場所からさらに緩やかな傾斜がついたスロープを降りた。その先にはT 字に分かれた道があり、そこを右に曲がるとさらに緩やかな傾斜があった。
この先だよ、レールがあるのは。
大男はぼそりと言った。
その後ろをついていくとやがて見え始めた。
それは大きなレールでハコが想像したのとは違った。
ハコが想像した物はトロッコのような簡易な物だ。
だがこのレールは違った。
本格的な客室車両だ。普通電車とも言える。
それほど大きな電車が1車両だけ食べ物を積んでレールを使ってがったんこばったんこと音を立てながら行き交いしてるようだった。
電車1両分の食料が自動的供給される。そんな事があるのか。
だが、現に目の前に電車が止まっているのだ。
そして男は電車から食料を取り出していた。
「こんな風にたくさんあるだろう?。お腹空かせているなら持っていくといい」
ありえない言葉を聞いた。
今!!この時代に!!持っていくといい。タダで!!何を言ってるんだこの男は!!。
それが少なくてもその言葉を聞いた時の率直な感想だ。
だが、驚き慌てふためくていた私と違って少女は落ち着き払って静かに言った。
「それじゃあご厚意に甘えていただきます」
「まだまだあるから欲しかったらまた言ってね」
男は静かに笑った。
そして少女は受け取ったダンボールを持ってハコの所へと戻ってきた。
「多分ね、この人は知らないだけ、本当に知らないだけだから何も言わないで」
ハコは少女の何とも言えない悲しい瞳を見て押し黙るしかなかった。



作者あとがき


今回は男がどんな奴か明らかになった。
この男は多毛症で毛深いのだろう。
顔にまで毛があるのだから。
それと大きな謎が出てきたあれほどのことが起きたのに とハコは言っているがあれほどの事とはどんな事だろう。
それはこれから書いていこうと思うがまだ登場するわけではない。
しかし地下深くに鉄道が敷かれていてそれが常に食糧を供給してくれるなんてとても便利な環境だ。
だがその代わり男はずっと一人だったらしいので多分少女が成人して初めて会う人間だろう。
それでも男が驚きはしつつも恐怖を抱かなかったのはたぶん男を育てた人間がいい人だったのだろう。
そうでなくては人間に出くわした時点で声を荒げてもおかしくはない。
まぁあとがきもこの辺にしておこう。
今回の話は書くのに時間がかかってしまった。
体調が良くなかったことに加え、音声入力がいまいち調子が良くなくしっかりと反映してくれなくて手で修正する事が多かったからだ。

            それではまた


























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